中小企業の経営課題 いろいろあるけれど「人材育成」が最重要では
ITコーディネータは、IT経営を実現するためには経営面からも入り、経営課題を明確にして行かねばなりません。
どの企業もあれもこれもと経営課題が山積しており、どこから手をつけて良いのかと、手をこまねいているのが実情です。
売上減、資金不足、人材不足とやらねばならないことがたくさんあり、結局、今月の売上を何とか確保、という短期的な対策のみを行っていて、長期的な対策は何も手を打つことができない、という企業が非常に多いと感じています。
これでは、今月の売上はたとえ確保できたとしても来月の売上を保証するものでもないし、その先は全くの暗闇の状態です。
しかし、この状態のままでは近い将来には破綻することが避けられません。苦しくても、少しずつでも長期的な対策を打って行かねばなりません。
そういった意味で、今、中小企業が一番やらねばならないことは何でしょうか。
私は、やはり「人」であると思います。
かって、量販店に勤務していた頃、電算室を離れ、販売本部に異動しました。そしてそこで直面したのが、店舗の仕事のできる人ほど辞めていく、という現実でした。その当時、店舗のチーフは社員、パート・アルバイトの管理から販売計画の策定、発注、生鮮は商品加工とほとんど1人でこなし、パート・アルバイトは雑作業しかできない状況でした。要は部下の教育、指導が全くできず、その分、チーフが何から何まで自分でやらねばならないという悪循環に陥っていました。それまで、本部は、チーフの仕事として「部下の育成」を口うるさく言ってまいりましたが、現場では、現実問題としてOJTでも教育をしている暇など全くない、というのが実情でした。
そこで、本部は反省しました。これは本部の仕事であると。本部に教育担当をおき、パート・アルバイトの戦力化に取り組んだのです。結果はすぐに現れ始めました。
今、中小企業を訪問して感じるのは、まさに過去に私が経験したのと全く同じ状況で、そこからなかなかはい出せないでもがいている現場の実態です。元々十分な頭数がいない状況で教育を行うなど、中小企業にとっては負担が大きすぎると思いますが、できる人に仕事が集中している現場を見ると、いつまでこの人ががんばれるかと不安になってしまいます。
誰に何の仕事を覚えさせればできる人の仕事を減らすことができ、その分、他の仕事に振り分けられるか、少しずつでも計画的に教育を行わねばなりません。
私どもでは、以下のような手順を提案しています。
1.必要な技術の棚卸
自社で必要とされる技術にはどのようなものがあり、どの程度のレベルの技術が必要か、洗い出しをします。
2.従業員の技術棚卸
従業員がどのような技術を持っており、そのレベルがどのくらいの習熟度であるかを調査し、従業員の保持する技術をデータベース化します。
3.従業員の多能工化
企業として必要とする技術をどの従業員に習得させるか、従業員と話し合いながら取得する技術レベルを決めていきます。
4.教育カリキュラムの作成
大きな問題は、誰が教えるかです。本来、指導すべき方は忙しくてほとんど時間をとることは困難な状態です。かといって、誰でも教育できるものではありません。
中小企業においては、教育は一人に押しつけるのではなく教育できる方に少しずつ負担していただき、少しずつ教育して行かねばなりません。
教育カリキュラムを作成し、各個人のレイバースケジュールの中に、教育の時間を入れ込んでいきます。
5.教育
教育カリキュラムに従い、長いレンジの中で教育を実施して行きます。
6.教育の効果測定
教育をしたままでは、果たしてどのような効果が出てきたか、わかりにくいものです。経営戦略の中でBSC(バランススコアカード)を導入し、教育指導の最終目標や中間目標を設定した上で教育を行えば、より人材育成の目標が明確になります。
経営課題の解決は時間のかかるものです。付け焼き刃で行ったことは前に戻ることも早いですが、少しずつでも時間をかけて行ったことはなかなか元に戻らないものです。
こんな時代に悠長なことは行っていられないと言われますが、でも一歩一歩前に進んでいる企業にはかなわないものです。
経営課題はいろいろあるけれど、一番手間と時間のかかる「人の育成」、これを怠っての将来はありません。